美容師は一見華やかな仕事に見えて、実はその裏では大変なことも多く辛い経験をしている人も少なくありません。

そこで今回は、美容師が感じる辛いこととその解決方法について解説します。

美容師の大変なこと・辛いこと3選

カリスマ美容師という言葉が流行語になった2000年代から時代が流れ、華やかなイメージのある美容師の辛い部分もクローズアップされるようになってきました。

表舞台での華やかさとは裏腹に、実際に美容師が辛い・大変だと思うことを3つ厳選して解説します。

長時間の立ち仕事で脚・腰が辛い

美容師の仕事は新人の頃はもちろん、ある程度地位が上になってからも、お店に出ているときは基本的に立ち仕事がベースになります。

新人の頃は特に開店前の早い時間に出勤し、マネキンでカットやパーマの練習に励む人も多いものです。

例えば、朝10時に開店する美容室でも新人は朝の7時に出勤し、お店の清掃を一通り済ませてから自分の練習に入ります。そこから開店時間から閉店時間まで薬剤の準備や、シャンプーカット済みの髪の毛の掃除までたくさんの仕事をこなします。

それだけではなく、閉店後の時間にも向上心の強い美容師は早く上達するために、練習してからようやく退勤するという人も多いのです。

12時間勤務もあり得る長時間労働でありながら、さらにその時間のほとんどを立つことになるため、身体的にもかなりの負担になるでしょう。

長時間の立ち仕事であるだけでなく、シャンプーやカットの際に腰をかがめる動作がたくさん発生します。この動作によって腰痛持ちとなり、通院しながらも美容師を続けている人も多いでしょう。

お客様との会話が辛い

美容師をしていると、接客としてお客様と会話をする場面があります。

髪型提案などのオーダーに関することから、カラーリングやカットの間に沈黙が生まれないように、一生懸命会話をするという人も多いでしょう。

しかしお客様の中には、内向的で美容師との会話を好まない人もいます。同じように美容師の中にも内向的な人がいて、初対面の人と会話をすること自体が辛いという人もいるでしょう。

ところが、美容室でお客様が過ごす時間は短くても1時間程度です。カラーやパーマを施術する場合は、3時間ほどの間コミュニケーションを取る必要があります。

常連のお客様なら沈黙でも気まずくない関係性であることもありますが、新規のお客様だとお互いに探りながらの会話なので、トークスキルがない美容師にとってはかなり辛い体験でしょう。

雑誌を読んでいるお客様に対して話しかけていいのか、独身か既婚かわからない女性に家庭のことを聞いて失礼にならないか、など、コンプライアンスに厳しい現代だからこそ、多くの美容師が神経を使う場面が、「会話」でしょう。

美容師学校で学んだことが役に立たず現場に立ってからが辛い

美容師免許を取得するためには、専門学校などに通い、実践と座学の講義を受ける必要があります。

専門学校の学費を支払うだけでも大変なのに、2年間高い出席率をキープしながら勉強を続けるのも大変です。さらに大変なのは美容師学校で学ぶその内容が、現場に出てみると全くと言っていいほど役に立たないことではないでしょうか。

美容師の専門学校では、特殊なカラーリングの技術や、バロック時代の音楽家のようなパーマスタイルをイヤというほど練習させられます。

その度に教材を購入して、学校指定のテキストも購入しなければいけません。

しかし、実際に現場に出てみると、そんな特殊なカラーリングをしたいというお客様は本当に一握りで、バロック時代の音楽家のようなパーマに至っては、「あえてそのヘアスタイルにしたい」という人がいないのです。

それよりも、いかに早く髪の毛を掃除できるか、お客様の骨格やライフスタイルにフィットする髪型を提案できるかなど、もっと現実的なスキルが求められ、それらの現実的なスキルは結局専門学校ではなく現場で学ぶことになります。

時間とお金というコストをかけて学んできたことが生かせず、結局は現場でイチから学び直す必要があり、美容師の多くは「最初の3年間は地獄のように辛い」と愚痴をこぼすことになるのです。

美容師が辛くなったときの解決方法3選

いつもカジュアルでおしゃれな服装で通勤できて、好きなことや得意なことを仕事にしているイメージの強い美容師ですが、この記事で紹介してきたように辛いことはたくさんあります。

お酒を飲んで忘れたり、誰かに愚痴をこぼすのも一時的には解決方法として有力かもしれませんが、根本の解決策にはならないでしょう。

そこでここでは、美容師が辛いと感じたとき、その辛さを解決する方法を3つ厳選して解説します。

会話が辛い美容師は「傾聴力」を身につける

まず、自分自身が内向的な性格で、どうしてもお客様に話しかけるのが辛い、会話を続けるのが苦痛だと感じている美容師の方は、「無理に話そうとしないこと」が大切です。

「自分が話さなければ沈黙が生まれるかも」「お客様に気まずい思いをさせたくない」と思って無理やり自分から下手に話しかけている人が身につけるべきなのは、話す力ではなく「聴く力=傾聴力」でしょう。

自分から話してばかりだと、常連のお客様の場合は「また同じ話をしてる」と思われるかもしれませんし、新規のお客様の場合でも「私は毎日の髪のケアについて聞きたいのに、この人自分の話ばかりしてる」と思われるかもしれません。

会話上手に見える人の多くは、実は「傾聴力」に長けています。

具体的には、相手が話したい話題がないか探り、相手が話し始めたら、次のようにして相手の話をよく聞きます。

  1. 少し大げさなくらいにうなずく
  2. 相手の話をオウム返しにする
  3. 「それはどうして?」「その後どうなった?」などの相槌で話を掘り下げていく

①については非言語的なコミュニケーションとして非常に大切で、「あなたの話を興味を持って聞いていますよ」という信号を送るのに大切です。

②は「今の会社辞めようか迷ってるんだよね」という話をされたとき、すぐにあなたの考えを述べるのではなく、「辛いことがあって、辞めようと思ってるんですか?」など、相手の言葉を一部繰り返すことで、相手の話をさらに続けさせることができます。

③については、そのままにしているとすぐに終わる会話を深掘りすることができ、話しているお客様本人が気づいていなかった解決方法にまでたどり着く可能性を導き出すことができます。

このように、「傾聴力」を身につけることによって、自分が話す負担は最小限にしながら、お客様に気持ちよく話してもらうことができるでしょう。

最初の3年で辛くなったら他の店舗に転職する

専門学校を卒業したての美容師にとって辛い最初の3年間は、あなたのキャリアについて考え直すチャンスでもあります。

最初に就職したその美容室が、実はあなたとの相性が最悪な美容室だったという可能性もあるでしょう。実際、数ある美容室の中には、育てる力がない美容師が多く在籍していて、新人の育成が難しい環境の美容室もあります。

ただでさえ、美容師の当たり前になっている「最初は先輩を見て覚える」という常識は非常に効率が悪く、令和の時代にはそぐわないものです。

「せめて3年は我慢して働き続けてみよう」と考えている美容師の方は、思い切って育成に力を入れている美容室に転職してもいいでしょう。

育成に力を入れている美容室は、同じ「見て覚える」という工程でも、先輩のアドバイスが上手かったり、実践でデビューするタイミングが早かったり、講習に参加する制度が整っていたりします。

「え、そんな美容室あるの?」と思った人は、育成環境が整っている美容室に転職することで、もっと短期間でキャリアアップ・スキルアップすることができるでしょう。

立ち仕事で腰が辛くなったら転職を考える

美容師にとっての辛いことでも紹介した、腰や背中などの痛みの症状を感じている人は、そのまま美容師の仕事を続けても、辛い症状はどんどん悪化していくでしょう。

腰だけではなく、パーマ・カラーの薬剤や、度重なるシャンプーで手荒れがものすごくひどくなっていて、ハンドクリームを塗っても皮膚の回復が追いつかない人も多いのではないでしょうか。

手肌の荒れも、ケアしてもケアしても結局毎日シャンプーをしてダメージが積み重なっていくため、ヘアアートディレクターなどに昇進したり、経営側に回らない限り、根本的な改善を望むことはできません。

根本的な改善ができず、このまま症状が悪化するのを避けたい場合は、転職するという選択肢も考えてみましょう。

もしもトークスキルに自信がある方は、一日の中で立ったり歩いたり座ったりと動きの多い営業職に転職するのがオススメです。初対面の人との緊張感ある空気の中で、相手との会話を続けられる時点で、営業の素質があります。

座りっぱなしでも立ちっぱなしでもない営業職の仕事は、程よい運動量で腰の負担になる可能性が低く、もちろん手荒れも心配は皆無です。

トークスキルに自信がないという人は、マニュアルが完備されているコールセンターもオススメです。

基本的にデスクワークではありますが、最近は休憩時間をこまめに挟んでくれる企業も多く、会話は必要ですがマニュアルがあるため、個人のトークスキルに依存しません。

自分の適正と、美容師の仕事の中で最も悩みだと感じている部分が解消される仕事に転職することで、健康被害が出る前に気持ちも新たに新生活をスタートできるでしょう。

まとめ:手荒れ・腰痛の症状が辛くて先が見えないと感じたら特に早めの転職がおすすめ

美容師は資格取得までに時間とお金のコストがかかる割に、美容室デビュー後に現場で覚えることが多く、勤務中の腰痛や手荒れに悩み、またお客様との会話に辛さを感じる人が多いようです。

我慢して美容師の仕事を続けても、大きく出世するか、自分の店を持たない限りは悩みを解決することは難しく、多くの人が30代を手前に「このままでいいのか」と疑問を感じるでしょう。

美容師の仕事が辛く、限界だと感じたら、自分の適正と希望のビジョンに合った仕事に転職することをおすすめします。

年齢を重ねて転職限界年齢になる前に、見切りをつけるというのもまた、解決方法の一つだと言えるでしょう。