食品工場でのアルバイトには、ライン作業ではなく「清掃」に特化したものもあります。しかし、食品工場の清掃はきついという声も多く、始める前に不安になる人も多いでしょう。

そこで今回は、食品工場の清掃がきついと言われる理由について、実際に働いたことがある人の体験談を紹介しながら解説します。

「食品工場の清掃」には大きく分けて2つの種類がある

食品工場が出す清掃系の求人は、実は2つの種類があります。

この種類によって仕事内容がきつい・きつくないが大きく分かれるため、まずは働く前にこの2つの種類についてよく知っておくとよいでしょう。

きついという声多数!食品工場内部の清掃

食品工場の清掃仕事がきついという噂のもとになっているのが、この工場内部の清掃です。

工場内部の清掃の場合、機械の外部はもちろん、細かな部品の1つ1つを分解して清掃する仕事もあります。また工場のだたっ広い床・大きくて高さのある窓など、とにかく清掃の範囲が幅広く、単純に体力を要します。

その割に清掃のアルバイトは雇用人数が少ないため、少人数でたくさんの仕事を時間内に済ませる必要があるのです。食品工場はとにかく広い場合が多く、そのすみずみまで清掃するわけですから、勤務時間も5時間程度で休憩なしの場合があります。

さらに工場によっては工場の外側の窓や敷地内の清掃まで含まれていることもあります。

それなのに時給は950円~1,000円程度であることが多く、「これだけやって、この時給か」と思うと、余計に仕事がきつく感じる人が多いようです。

比較的ラクな場合が多い!食品工場の共有部分清掃

同じ食品工場の清掃でも、「当たり」と呼ばれ、応募人数が多くなりがちなのが食品工場の共有部分に限定された清掃の求人です。

この場合、機械の清掃は含まれないため、それだけでもだいぶ作業がラクになります。

共有部分である休憩スペース、出入り口、ロッカールーム、廊下、階段、トイレを清掃するため、清掃箇所が工場内部の清掃よりも限定されているという特徴があります。

清掃対象となる敷地面積が食品工場内部の清掃よりも狭いため、きついという声はあまり聞かれません。

これで食品工場内部の清掃と同様の時給が支払われるため、清掃スタッフにも共有部分の求人が人気になっているようです。

【体験者が解説!】食品工場清掃の仕事がきついと言われる5つの理由

食品工場の清掃の仕事のどの部分がきついと言われるのか、実際に働いた人でなければわからないことも多いでしょう。

そこでここでは、実際に食品工場の清掃スタッフアルバイトとして働いていたAさんの体験談に基づき、Aさんの視点からその仕事内容が「きつい」と言われる5つの理由について解説します。

天井掃除がきつい!高所恐怖症には無理なレベルの脚立に立って重労働

食品工場の清掃で、個人的に一番きつかったのが、天井の掃除です。

僕が働いていた食品工場は、有名な某お菓子工場で、企業が大手ということもあり、敷地面積が5,000平方メートルを超える大きさでした。

工場の中でもかなり大きい方で、だからこそアルバイトの求人が出やすかったというのもあると思います。それだけ広い工場の清掃なので、まず床掃除だけでも一苦労。

ただ、床については業務用の掃除機があって、機械を回して歩き回るだけでいいので、ここまではラクです。

問題は、掃除機で落としきれなかった汚れをピンポイントで落とすところ。ここは手作業で地道に落としていきます。

現場には清掃管理の監督者がいるのですが、監督者が全体のチェックを行って少しでも汚れが残っているとやり直しになるんです。床だけでも2時間くらいかかかり、大変でした。

しかし、それ以上にきつかったのが「天井」の清掃です。「掃除は上から」の鉄則にしたがって、まずは床掃除の前に天井掃除をするんです。

お菓子工場って、テレビとかでもたまに映ると思うのですが、非常に綺麗ですよね。実は映っていない天井も丁寧に清掃しているんです。

でもお菓子工場の天井は、お菓子に使用される油が空調と一緒に跳ね上がって、べったり汚れていることが多いため、一番清掃が大変でした。

腰に清掃用具をセットしたベルトのような物を巻いて、7m以上ある業務用の脚立に登って、少しずつ横に脚立をずらしながら掃除するのですが、これが非常にきつい。僕は特に高い場所が得意ではないので、脚立に登るっていうだけでもきつかったです。

ずっと手を伸ばした状態で作業するので、普通に肩も辛くて、腕も途中からプルプル震えてくるほど。

天井掃除は毎日ではなかったですが、非常にきつかったので、これが原因で辞めたと言っても過言ではないです。

専用洗剤のニオイがきつい!手袋越しに残る強烈なニオイ

食品工場の油汚れなどしつこい汚れを落とすために、清掃には業務用の洗剤・溶剤を使用していました。

この洗剤のニオイは、実際に嗅いでみないとなんとも言えないのですが、鼻にツンとくるきついニオイで、僕はこのニオイに最後まで慣れることができませんでした。

洗剤の原液があって、原液を大きいバケツに入れて水で薄めて使うのですが、原液のニオイを嗅ぐだけで気持ちが悪くなるくらい、きついニオイなんです。清掃中もその洗剤を使っている間はずっとそのきついニオイがつきまとって、換気しても全然気分が良くならない。

もちろん清掃時は厚めのゴム手袋が支給されているので、ゴム手袋を装着して清掃するのですが、その厚いゴム手袋を通してニオイが手につくんです。

僕は清掃の仕事と、夜の居酒屋のバイトを掛け持ちしていたのですが、そのニオイについて居酒屋の店長から指摘されるくらいでした。

少しニオイが薄れてきたなと思っても、また翌日清掃の仕事が入っているので「きちんとニオイが取れる」ということがあまりなく、オンオフの切り替えが取りにくいなと感じたところもきつかったです。

厳格すぎる衛生基準がきつい!清掃監督からのプレッシャーも地獄

工場清掃の仕事は自動車・衣類工場などでたくさんありますが、中でも特に衛生管理基準が高いのが、食品を取り扱う食品工場です。

僕が求人に応募したときは、単純に「お菓子工場ならたまにお菓子もらえたりするかも」「甘い良いニオイの中で働けるかも」と思ったからなのですが、これほどきついならそもそも食品工場は選ばなかったです。

清掃現場には清掃管理の監督者がいて、僕が働いていた現場の監督が結構言動がきつい方だったんですよね。各清掃スタッフにチェックリストが配られて、そのチェックが埋まったら監督に持って行って、項目ごとに監督による確認が必要でした。

その確認が一筋縄ではいかなかったんです。すぐOKがもらえることはまずなくて、項目1つ1つに「ここの汚れが残ってる」「ここ本当に清掃した?」などとケチがつくことがあって、結局1度の清掃で終わらない。

やり直しが何度も続くと、さすがにイヤになるほどきつかったです。

残業がきつい!清掃開始時間=工場の業務終了時間だから予定通りに働けない

食品工場の清掃って、当たり前ですが生産業務が全部終わってからじゃないと始められないんです。

つまり僕たち清掃スタッフは、生産工程が終わるのを待って、ようやく仕事を始めることができることになります。時間通りに生産工程が終わる時期は問題ないのですが、繁忙期とか、売れ筋商品が出て生産数を上げるために生産工程が長引く時期が大変です。

16時に生産工程が終わるはずが、特に僕たち清掃スタッフには連絡なく、「今日は生産が延長してて、(生産工程の仕事)上がりが18時になります」という感じで出勤してから知らされることが多々ありました。

そういう時はすべての作業時間が後ろ倒しになるので、僕たち清掃スタッフの退勤時間も遅れます。

夜に友人と約束したり、さらにひどい時は清掃の仕事の後に入れていた居酒屋のバイト時間と重複してしまい、いろいろ調整するのが大変でした。

機械の移動・清掃用具の移動がきつい!実際に腰を傷めたことも

僕が働いていた食品工場では、清掃用のワゴンがあって、そこに清掃用具を乗せて広い工場内を清掃して回っていました。

ワゴンの中にはバケツに入った水、清掃用の洗剤・溶剤各種、各種ブラシや大量の雑巾などを入れていました。清掃監督に指示された箇所にそのワゴンを引っ張っていくのですが、ワゴンは工場に1台しかありません。

僕以外にもシフトが入っている清掃スタッフが3人いたのですが、いつもワゴンの奪い合いでした。ワゴンを使えない清掃スタッフは、重いバケツなどを持って自力で移動することになります。

このバケツや洗剤が重すぎて、勤務後は必ず腰が張る感覚が残るんです。僕が働いていたお菓子工場では、小型の機械もあり、小型機械は少しずらして機械の下も清掃する必要がありました。

この機械にはキャスターが付いているのですが、機械自体の重さがあるのとキャスターが古くてギシギシと動きにくいため、移動させるのに力が必要でした。

女性の清掃スタッフだと動かせない人も多く、いつも僕が代わりに動かす役目になっていたのもきつかったです。

ワゴンに外れた日と、機械をたくさん移動した日の腰の痛みはなかなか取れず、辞める直前はプライベートでも痛み止めの湿布とサポーターが必須なくらいでした。

働く前に知っておきたいこと!食品工場清掃の仕事はきついがバイトよりも正社員だとラクで給料もいい

実際に働いたことがある方も認めるほど、食品工場清掃のアルバイトはきついことは事実なようです。しかし、同じ食品工場でも雇用形態がアルバイトではなく正社員の場合、業務内容はもちろん、給料も大きく変わります。

清掃スタッフのアルバイトが時給950円だったとして、週5日、1日5時間勤務だった場合の年収は114万円です。月の収入は9万円ほどのため、清掃のバイトだけで生活していくことは難しいでしょう。

一方で食品工場正社員の平均年収は394万円となっています。

正社員の場合は勤務時間が1日8時間以上になるため、そもそも比較できるものではありませんが、それでも年収に4倍の差がつきます。(参考:「求人ボックス 食品工場の仕事の年収・時給・給料」)

さらに正社員の場合は工場内の機械の操作、メンテナンス依頼、アルバイトの管理などで、現場仕事とデスクワークのバランスがちょうどよく、体を壊すほどの肉体労働はありません。

同じ場所で働いていてもここまで給料と仕事内容が変わることを考えると、正社員として働いた方がメリットが大きいと言えるでしょう。

まとめ:食品工場清掃はきつい!正社員を目指して転職した方が後悔しない可能性大

きついと噂の食品工場清掃のアルバイトは、今回紹介したAさんの体験談によると事実として「きつい」ことがわかりました。

しかし、同じ食品工場でも正社員となると仕事内容も給料も異なり、きつい肉体労働もなく、バイトの約4倍の給料が支給されます。

これから食品工場清掃のバイトを始めるか迷っている方は、同じ食品工場でも正社員を目指した方が良いでしょう。

食品工場に限らず、正社員は「清掃」に限定した仕事を与えられることはなく、選び方次第では肉体的にきつくない仕事を選ぶことも可能です。

まずはアルバイトという選択肢から再考し、自分に合った正社員の仕事を探してみることをオススメします。