フリーターと契約社員は、契約期間が限定されているという意味で共通点があります。

しかし実は細かく比べてみると、ボーナスや福利厚生などに明確な違いがあり、同じものではありません。

そこで今回はフリーターと契約社員について、それぞれの特徴やメリットについて比較しながら解説していきます。

自由だけど安定性はイマイチ!フリーターの特徴とメリット

フリーターと契約社員の違いを知るために、まずはフリーターとは何かという特徴と、フリーターとして働くことのメリットについて解説します。

意外と知られていない!フリーターと呼べるのは34歳まで

アルバイトとほぼ同義語として使われている「フリーター」という言葉ですが、実は厚生労働省の定義によると「フリーター」と呼べるのは34歳までとなっています。

厚生労働省によると、フリーターとは「15~34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者とし、1 雇用者のうち勤め先における呼称がパートまたはアルバイトである者、2 完全失業者のうち探している仕事の形態がパート・アルバイトの者、3 非労働力人口のうち希望する仕事の形態がパート・アルバイトで家事・通学等していない者」と定義されています。(参考:厚生労働省「正社員?フリーター?何が違うの?」)

つまり、男性は最終学歴となる学校を卒業していて「パート・アルバイト」として働いている人や、定年退職後に「パート・アルバイト」として働いている34歳以下の人がフリーターです。

一方、女性の場合は最終学歴となる学校を卒業後、「独身」で、なおかつ「パート・アルバイト」として働いている34歳以下の人がフリーターとなります。

つまり既婚女性がパートで働いている場合はフリーターとは呼ばないし、男女ともに35歳以上の場合は、同じようにパート・アルバイトとして働いていても、厳密には「フリーターと呼ばない」ということになります。

フリーターの特徴とメリットとは

フリーターの定義で紹介した年齢などのほかにも、フリーターにはいくつかの特徴やメリットがあります。

雇用形態の特徴

まず、フリーターの場合、雇用形態はパートかアルバイトとなっており、非正規雇用です。雇用期間に定めがないため、社会的な地位や収入面では不安定な一面があります。

非正規雇用とはいえ、会社の従業員であることに変わりはないため、就業場所は会社が決めたところで働く必要があります。

非正規雇用ではあるものの、フリーターでも正社員同様、労働基準法で労働の権利は守られています。アルバイト・パートだからといって会社が自由に解雇できるわけではありません。

業績の悪化に直接的な影響を与えた、法を犯す行為を行なったなど、正当な解雇理由がなければ、会社は雇用し続ける必要があります。そのため非正規雇用とはいえ、ある程度安定した雇用が保障されていると考えることもできます。

給与体系の特徴

フリーターの場合、給与は「時給換算」で支払われます。

時給がいくらかによって給与の額は変わってきますが、東京都の最低賃金である1,041円で考えると、月20日・8時間労働の場合は、

(1041×20)×8=166,560

という計算になり、月収は16万程度になります。(参考:台東区「東京都の最低賃金は令和3年10月1日より1,041円になります」)

もちろん最低時給よりも時給の高い仕事はあるため、月に20万円を超える収入があるフリーターも少なくありません。

福利厚生の特徴

フリーターの場合、実際はパート・アルバイトとして勤務しているため、基本的に社会保険には加入できません。しかし、これには例外があります。

週の労働時間が30時間を超える場合、パート・アルバイトでも社会保険に加入することができるのです。1日6時間で5日勤務した場合、この条件に当てはまるため、社会保険に加入できることになります。

また、基本的にはパート・アルバイトの場合はボーナスが支給されることはありませんが、これにも例外があります。ある大手ショッピングモールでは、学生アルバイト以外のパート・アルバイトにはボーナスが支給されるのです。

このように、例外的な福利厚生にも注目して仕事を選んでいくことによって、フリーターでも比較的安定した生活を実現することも可能です。

働き方の特徴

フリーターは、自分の希望の日時にシフトを入れるというシフト制で働くことになります。

とはいえ、実際は自分の希望通りに入れない職場も多く、「土日勤務なし」と言いながらも「土日の人出が足りないからもっと出てもらわないと困る」と上司に言われ、本来休みたい土日にもシフトを入れられることもあるでしょう。

シフトの自由度は職場によって異なりますが、アルバイト・パートには責任重大な仕事は回ってきません。悪くいえば代わりがきく、比較的簡単な仕事がまかされ、社員がフリーターを管理するという構造です。

良くいえば社員に比べて責任が軽いため、精神的な負担が少ない仕事が回ってくることになります。

フリーターのメリットは自由度が高く他の仕事とも両立しやすい

フリーターになる人は、就活に失敗して仕方なくパート・アルバイトとして働いている人もいますが、何か他に夢があって、夢が叶うまでの間に食いつなぐ方法としてフリーターという選択肢を選んでいる人もいます。

フリーターの場合は他の仕事とも兼業できるため、お笑い芸人やミュージシャンを目指しならパート・アルバイトを掛け持ちしている人もいるのです。このような働き方ができるくらい、フリーターは自由度が高いといえます。

時給制のためシフトがたくさん入れられないと生計を立てるのは難しいのですが、自由度の高さを求める人にはフリーターが合っていると言えるでしょう。

社会的信用はフリーターより高い?契約社員の特徴とメリットとは

フリーターは自由度が高い働き方である一方、社会的地位は比較的低く、賃貸物件を契約するときなどに審査が通りにくいというデメリットがあります。

このようなフリーターの特徴と比べて、契約社員の方が比較的社会的信用が高い傾向にあります。

ここでは、先ほど解説したフリーターの特徴とメリットと比べながら、契約社員の特徴とメリットについて紹介します。

1回あたりの契約上限は3年?契約社員の定義

厚生労働省は、契約社員の定義について、次のようにまとめています。

契約社員といわれる人たちなどにみられるように、正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。

(引用:厚生労働省「さまざまな雇用形態」)

この厚生労働省の定義にもあるように、契約期間の上限が基本的に「3年」と定められています。

フリーターに比べてきっちり雇用期間について言及されているのが違いであり、フリーターよりも不安定であるという見方もできるのです。

契約社員の特徴とメリットとは

契約社員の定義で紹介した契約年数などのほかにも、契約社員にはいくつかの特徴やメリットがあります。

雇用形態の特徴

契約社員は、非正規雇用枠です。

非正規雇用である点はフリーターと共通しているのですが、契約社員の場合はフリーターと違って雇用期間に定めがあります。

多くは1~3年程度の雇用期間であり、この期間の雇用は保証されていますが、裏を返せば雇用期間で契約が満了を迎えれば、それ以降の雇用は保証されないことにもなります。

働きぶりが会社側に認められ、契約期間が延長されることはありますが、確実なものではありません。そのため契約期間満了の前に延長の声が掛からなければ、次の仕事を探さなければいけないという特徴があります。

給与体系の特徴

フリーターが時給制であるのに対し、契約社員は固定給です。

月収が決まっているため、アルバイトよりもクレジットカードや賃貸物件の審査が通りやすいという特徴があります。ただ、固定給であるとはいえ、その金額は正社員に比べると高いとは言えません。

厚生労働省の調べによると、契約社員の年収は200~249万円が中央値となっています。つまり、契約社員として働いている人の大半が年収200万円代に収まっているということです。(参考:厚生労働省「労働法制の動向」)

フリーターと比べると、50万円程度しか年収が変わらず、フリーターよりもすごく稼げるというわけでもありません。ただ、毎月の収入が固定されているという面では、フリーターに比べて安定した給与体系であると言えるでしょう。

またボーナスも会社によっては契約社員にも支給しているところも多く、ボーナスの支給があれば、フリーターよりは稼ぎが良くなる可能性があります。

福利厚生の特徴

契約社員の場合、フリーターと違って労働時間が8時間程度で固定されています。そのため社会保険への加入も当然認められています。

これだけでも安心感がありますが、会社によっては健康診断の費用を会社が負担してくれたり、研修を受講する際の費用を負担してくれたりするところもあります。

契約期間は限定されているとは言え、あくまでも「社員」であるため、福利厚生の面ではパート・アルバイトを含むフリーターよりも優遇されていると言えるでしょう。

働き方の特徴

シフト制で働くフリーターと違って、契約社員はフルタイム勤務です。会社が定めた労働時間があり、休日も会社の定めた休日に合わせる必要があります。

自分の好きな時間帯を選んで働くということができない点では、フリーターよりも自由度の低い働き方であると言えるでしょう。ただ、契約社員はフリーターにはない「有給」を使うことができます。

労働基準法では、6ヶ月間継続して働いた従業員に対して、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日間の有給を与える義務があるとしています。

つまり6ヶ月以上の契約期間があり、その間無断欠勤などせずにきちんと出勤していた契約社員なら、年間10日の有給休暇が認められるのです。

実際に申請するときに言い出しにくいという現実的な部分はあるとしても、法律的に給料をもらって休める日が10日もあるということは、フリーターに比べてかなり恵まれていると言えるでしょう。

契約社員のメリットは社会的地位と有給!給料もフリーターより高め

契約社員はフリーターに比べて、フルタイム勤務であり、さらに一定の収入が一定の期間保証されていることから、フリーターよりも社会的地位が高いというメリットがあります。

さらに半年以上の契約で勤務している人には有給も発生し、社会保険の加入も認められていることから、福利厚生の面でもフリーターより有利であると言えます。

年収でも50万円程度フリーターより高い傾向にあり、生活も安定しやすいでしょう。

その反面、フルタイム勤務で副業を禁止している会社もあることから、フリーターより自由度が低く、他の仕事と掛け持ちすることは困難であるという特徴もあるようです。

まとめ:フリーターと契約社員の違いは給料・有給・社会的地位!希望の働き方ができる方を選ぼう

契約社員はフリーターよりも給料が高く、有給もあり、社会的地位が高いという特徴があります。

フリーターは給料は契約社員よりも給料が低く、有給はなく、社会的地位も低い一方で、シフトをある程度自由に入れられるという特徴があります。共通する点は、どちらも非正規雇用であるというところです。

契約社員もフリーターも、会社によっては働きぶりを見て正社員登用をするところもあります。

自由に働きたい、夢を叶えるまでの食い扶持を稼ぎたいという人はフリーター。

いろいろな仕事を期間を決めて体験してみたい、充実した福利厚生の中で正社員登用のチャンスを狙って社会的地位を向上させたいという人は契約社員がオススメです。

自分がどんな働き方をしたいのか、その希望によって雇用形態を選んで働くとよいでしょう。