今現在、アルバイトなどの非正規で働いていている人の中には、自由だし休みやすいし、このまま非正規でいた方がラクだし、正社員になりたくないと思っている人もいるのではないでしょうか。

しかし、今は正社員のメリットを感じにくいだけかもしれません。

今回は、正社員にならずに非正規雇用で働き続けることのリスクについて解説します。

正社員になりたくない理由とは?

新卒のほとんどが正社員という枠をかけて就活に燃えるくらい、正社員とは本来魅力的な働き方のはずです。

しかし、すでに現在フリーターとして生活している人の中には、「正社員にはなりたくない」「このままずっとフリーターでいたい」と考えている人も多いでしょう。

ここでは、正社員になりたくないと考えている人の理由について解説します。

仕事の責任が重い

正社員になりたくない人も多くが、正社員に対して「仕事内容がきつい」「アルバイトに何かあったときに責任を取らされる」というイメージを持っているのではないでしょうか。

確かにアルバイトと正社員では仕事内容が異なることが多く、正社員の方がアルバイトに対して指示を出しているため、社内的にも立場が上であることが多いでしょう。

すると必然的に、アルバイトがミスをした場合、そのミスの責任をとることになります。

さらに、これは職種にもよりますが、営業職などの直接部門の場合、自分の業績が振るわないことで直接的に会社の利益にダメージを与えることになります。

アルバイトよりも正社員の方に厳しいノルマが課せられることもあり、仕事に対するプレッシャーが強く、重い責任がのしかかることもあるでしょう。

アルバイトとして、上記のような正社員の働きぶりを見ていると、「正社員にならずにこのままアルバイトでいた方が良さそう」と思うようです。

正社員の方が残業が多い

会社との雇用契約内容にもよりますが、多くの正社員には「残業」が発生します。

労働基準法で定められている「1日に8時間、1週間に40時間」という労働時間を超えて、時間外労働や休日出勤をしている正社員も多いのです。

実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、正社員の1週間の平均労働時間は「47時間」と報告されています。

労働基準法が定める1日8時間労働を基準とすると、1週間でおよそ7時間、月に平均して28時間ほどの残業が発生していることになります。

(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現場」)

また、正社員の中でも「みなし残業」という形で給料にすでに残業代が含まれている場合は、一定の時間内であれば残業が見過ごされやすい環境にあるのです。

一方でアルバイトの場合、時給制で雇用されていることもあり、「アルバイトに次の1時間働かせて時給を発生させるより、みなし残業代を払っている正社員に残業させた方が得」という雇用主の考えがある場合、アルバイトには残業させず、正社員に仕事を振って残業させようとする企業もあります。

アルバイトとして働いている人の中には、定時で上がろうとしている時、まだまだ仕事が続きそうな正社員の姿を見たことがある人も多いはずです。

そのような正社員の働き方を見ていると、「正社員にはなりたくないなあ」と感じてしまうのでしょう。

頑張った分が稼ぎに反映されやすい

アルバイトの多くは「Wワーク可」と求人にある場合が多く、またいくつかのアルバイトを掛け持ちして稼いでいるというフリーターの人も多いでしょう。

フリーターの場合は、自分が稼ぎたいときには多めにシフトを入れて、少しゆっくり過ごしたい時はシフトを減らすことで、稼ぎを調整することができます。

さらにアルバイトを掛け持ちしている人は、上限の労働時間が勤務先ごとにリセットされるため、自分の体さえ大丈夫であれば、かなりの額を稼ぐことができるでしょう。

しかし、正社員の場合、転職せずに給料を上げて稼ぐための方法は3つ程度しかありません。

1つは残業をたくさんして残業代で稼ぐことです。

これは有効な手ではあるのですが、そもそも残業が必要なほど仕事がなければ成立しませんし、あまり残業ばかりしていると「効率の悪い人」と評価される可能性もあります。

2つめは昇進することです。

しかし昇進可能なポストには限りがあり、よほどコネがあるか、評価されるような実力がなければ昇進できません。

さらに昇進までには長い道のりが必要になることも多く、アルバイトほどすぐに稼ぎが増えるということを期待できないかもしれません。

3つめは各種手当などで稼ぐことです。

介護福祉や警備の仕事などでは、夜勤が発生します。

自分の希望でたくさんの夜勤シフトを入れてもらい、夜勤手当で手取り額を増やすという方法があります。

また、会社で「この資格を保有している人には月1万円の手当を支給する」と決められているような資格がある場合は、資格を取得して資格手当分を上乗せしてもらうという方法もあるでしょう。

ただ、夜勤は身体的に月に入れる数に限界があります。

資格も取得するまでには長期間の勉強が必要になるため、時間と努力が求められるでしょう。

今は良くても将来が大変?正社員にならないことのリスクを解説

ここまで解説してきたように、アルバイトには確かに、正社員に比べて「責任がそこまで重くない」「残業が発生しにくい」「Wワークやシフト数の調整で稼ぎやすい」というメリットがあります。

だからといって、これから先もずっとアルバイトの方が有利かというと、実はそうではない側面がたくさんあるのです。

そこでここでは、正社員にならずにフリーターで居続けることのリスクについて解説します。

年齢を重ねるごとに正社員の年収に追いつけなくなる

正社員の場合、保守的な企業ほど、給与が年齢と比例する傾向にあります。

20代の頃は月給18万円だったのに、50代になったら月給40万円になるというのも珍しくありません。

年功序列というと聞こえは悪いのですが、金融系やインフラ系などの昔からある企業ほど、年齢と給与に相関関係があり、歳をとればとるほど給料が高くなるのです。

しかし、アルバイトの場合はそうとは限りません。

時給には多くの場合、社内で上限が設けられていて、どれだけ長く働いたとしても、「アルバイトだ」というだけで、正社員のような給料の上げ幅を許されないことが多いのです。

すると、50代になった時、正社員は40万円だけど、アルバイトは少し時給が上がっても25万円ほどしかもらえないということは、よくある話です。

しかし多くのフリーターが「将来なんとかなる」と構えていて、勤務先の正社員とアルバイトの給料が上げ幅の違いを見て見ぬ振りをしてしまい、50代になって後悔するという事態に追い込まれてしまうのです。

賃貸の審査が通りにくい

フリーターを続けていると、毎月の収入に浮き沈みがあるでしょう。

希望したシフトよりも少ないシフトしか入れてもらえなかった月もあれば、繁忙期には通常よりも多いシフトをこなしてたくさん稼げるなど、収入に波がある人は多いはずです。

しかし、このような不安定な収入だと、アパートやマンションを借りるときの審査が通りにくくなります。

賃貸の審査基準は「きちんと毎月家賃を収められるだけの収入があるか」です。

この点で、家賃の支払いが難しいと思われるような浮き沈みのある収入を得ている場合、審査には通りにくくなります。

さらに明確に、「フリーターや派遣社員などの非正規は通りにくい」と感じている人もいます。

物件を貸す側としても、収入に波があるフリーターよりも、きっちり一定額以上の収入を得ている確約がある正社員に貸した方が、家賃収入も安定するからです。

一人暮らしをしたいのに部屋を借りられない、結婚したいのに新居を借りられないなどのリスクは、年齢を重ねるごとに増していきます。

「40代なのにアルバイトで収入が不安定」となると、よほどの預金残高がなければ新しく賃貸契約を結ぶことはかなり難しいでしょう。

退職金がなく老後は年金1本で暮らす必要がある

正社員の中には、勤務先に退職金制度があって、退職時にまとまった収入が得られるという人も多いでしょう。

正社員であれば退職時に数百万円から数千万円を手にする正社員がいる一方、アルバイトで同じだけ働いたとしても、非正規雇用だというだけでこの退職金を手にすることなく、老後の資金は年金だけということになります。

その年金さえも、年々支給開始の年齢が引き上げられていて、今の20代の人が年金を受け取る側になる時代には、生活を支えるだけの金額が支給される保証はどこにもないのです。

年金制度が破綻した際には、正社員が退職金で安定した暮らしをしている中、部屋を借りることもできず、余暇を楽しむ余裕もなく、食べていくのがやっとという人も増えてでしょう。

このような不安を背負って生きるということ事態も、アルバイトを続けていくことのリスクだと言えるでしょう。

30から40歳にかけて応募できる求人が激減する

今20代や30代の人の場合、たくさんのアルバイト求人があるでしょう。

肉体労働の求人が、20代や30代をボリュームゾーンとして出ていることもあり、働こうと思えばたくさんの働き口が見つかります。

しかし、実際に求人サイトを見てみても、40代以降のアルバイト求人数は一気に少なくなります。

特に50代以上となると、求人には「年齢制限なし」と書いてあっても、社内の採用サイドの方で「採用は30代まで」などと決めていることが多いのです。

今求人がたくさんあって、働く場所には困っていないというフリーターの人も、20年後、30年後は応募できる求人が激減します。

さらにその限られた枠には「リストラされて働き口がなくなった元正社員」「退職後に小遣い稼ぎをしたい知見のある高齢者」なども応募してくるため、競争率が非常に激しくなることが予測されます。

応募しても採用されにくく、現在肉体労働系のアルバイトをしている人は、自分自身の肉体の衰えと戦いながら、仕事が見つからない恐怖というリスクを負うことになるでしょう。

結婚・出産など将来選べる選択肢が減る

人生を歩んでいくうちに、結婚したい、子どもを持ちたいと考える人もいるでしょう。

もしも将来このような希望を持ったときに、フリーターでは実現できなこともあります。

賃貸の入居審査が通りにくいのと同じ理由で、住宅ローンやカーローンなどの審査が通りにくいというリスクがあるからです。

子どもができて、アパートでは暮らしにくく、一軒家を建てたいと思っても、フリーターでは住宅ローンの審査を通過することは非常に困難です。

地方都市で車が必須になっても、カーローンも組めず、自転車で遠くまで買い物に行ったり、子どもの保育園の送り迎えを雨の日も風の日も自転車でしなければならない…という事態になる可能性もあります。

もちろん独身で楽しく暮らすという選択肢もありますが、万が一自分が結婚・出産したいと思ったとき、フリーターという働き方を続けることで、それが思ったような形で叶わないこともあるのです。

まとめ:正社員になりたくないのは若いうちだけかも?将来を見据えたキャリアを意識しよう

確かに正社員はアルバイトに比べて責任が重く、残業が発生することもあるでしょう。

アルバイトの方が気楽に働けて、今の自分にはぴったりの働き方だと思っている人も多いかもしれません。

しかし、長い目で見たとき、退職金や社会的信用、安定した雇用など、正社員にしかないメリットがたくさんあります。

それに気がついたとき、あなたが40代・50代のフリーターだった場合、そこから正社員になるのはかなり難しいことです。

将来の自分が選べる選択肢を増やし、収入面でも困らないよう、若いうちに正社員を目指してみることをおすすめします。