正社員として働いているのに、月給を時給にしてみたら想像以上に安かった!という経験がある社会人の方は、実は少なくありません。
正規雇用枠なのにどうしてここまで給料が安くなってしまうのか、その計算方法のカラクリと、今から給料を上げていくための方法を解説します。
アルバイトより安くなる?正社員の給料を時給換算する方法

正社員のメリットは、アルバイトなどの非正規雇用よりも年収が高く、収入が安定している…と思っている人も多いでしょう。
しかし、働き方や企業によっては、時給換算してみると、アルバイトよりも正社員の方が時給が低いという事実もあります。
ここでは、どうして正社員の方が時給が低くなるのか、時給換算の方法と、時給が低くなってしまう理由について解説します。
正社員なのにアルバイトより給料が低くなる不思議
正社員なのにアルバイトよりも時給にすると給料が低いという事実について、「どうしてそうなるのか」と不思議に思う人も多いでしょう。
そこで、本記事では具体的な例を挙げながら、その仕組みについて解説します。
実際に地方の専門学校の事務職として働いていたAさんの例を見てみましょう。
- 額面の基本給:15万円
- 額面の年間賞与:30万円(1ヶ月分×2)
- 手取りの月給:12万円
- 手取りの年間賞与:25万円
- サービス残業:あり(月に平均20時間)
- 勤務時間:平日8時~18時(サービス残業含む)
地方都市だとこのような条件の求人は珍しくなく、年収200万円を超えるのがやっとという労働環境の人もいます。
このAさんの例を時給換算してみましょう。
額面の時給換算額:833円(15万円÷20日÷9h)
手取りの時給換算額:666円(12万円÷20日÷9h)
「アルバイトでもこの時給では働きたくない」と感じてしまう安さです。
しかし、残念ながらこれが現実であり、このような給料で働いているという人もたくさんいます。
さらに考えられる仕組みとして、アルバイトの中でも労働時間が企業が定める一定時間を超えていないと雇用保険に加入しないため、正社員に比べて控除額が少なく、アルバイトの方が手取り額が増えるということです。
正社員は各種保険への加入が必須な条件で労働しているため、控除額が大きくなってしまい、その結果Aさんのように手取り額が額面よりも大きく減ることになります。
もちろん老後の年金や普段の医療費などに有効活用されているとはいえ、毎月数万円の控除があると、それだけで手取りの給料が低くなり、控除額の少ないアルバイトと比べるとさらに収入の低さを実感してしまうのかもしれません。
時給換算してみて最低賃金を下回るなら違法
Aさんのように時給換算してみて、その額が国が定める最低賃金を下回っているとしたら、これは明らかな労働基準法違反となります。
では、どうしたら最低賃金を下回っているかどうか確認できるでしょうか。
実は厚生労働省が47都道府県の最低賃金を更新して発表し続けています。
物価や土地の価格が異なることから、最低賃金は勤務先の都道府県によって異なるため、自分の住んでいる都道府県の最低賃金を調べる必要があります。
令和3年に厚生労働省が発表・更新した最低賃金によると、日本国内で最も低いのは沖縄県で「820円」でした。
次いで岩手県、鳥取県、愛媛県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の「822円」が2番目に低い最低賃金です。
ちなみに最高賃金は東京都の「1,041円」でした。
(参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)
あなたの給料を時給換算してみて、住んでいる都道府県の最低賃金よりも安かったなら、そのまま働き続けるのは明るい未来につながらない可能性があります。
時給換算で驚くほど給料が低くなる理由
一般的にはアルバイトよりも正社員の方が給料が高くて安定していると言われているにも関わらず、なぜここまで時給換算すると正社員の方が給料が低くなってしまうのでしょうか。
その理由は、勤務先の体質と正社員特有の働き方にあります。
Aさんの例でも出てきたように、よくないとはわかっていても、「サービス残業」が会社自体に定着化していると、いやでもせざるを得ないのです。
サービス残業中は、いわゆる「ただ働き」です。
最低賃金を下回る時給すら発生していません。
労働時間が長いのに、一定の給与しか支給されないため、時給換算したときに正社員の給料が低くなってしまうのです。
さらに、定時で帰りやすいアルバイトに比べて、正社員はそのあとの仕事まで引き受けることが多いため、必然的に残業が発生しやすい環境にあります。
労働環境がきちんと整っている企業であれば、アルバイトも正社員も関係なく定時やそれに近い時間で退社できますが、いわゆるブラック企業であればあるほど、「アルバイトが残した仕事は社員が片付ける」風潮が強いのです。
ただ働きの時間が長くなればなるほど、時給はどんどん下がって行きます。
その結果、アルバイトよりも正社員の方が給料が低いという状況が出来上がってしまうのです。
時給換算してもアルバイトに圧勝!給料の上げ方を解説

せっかく頑張って正社員になったのだから、アルバイトよりもたくさん稼げるようになりたい!
時給換算してもアルバイトに圧勝するような稼ぎを実現したい!という前向きな気持ちがある方は、このまま泣き寝入りしてはいけません。
ここで紹介する給料の上げ方を実践し、満足のいく収入が得られるように努めてみましょう。
給与テーブルを明確にしている企業に転職する
時給換算したときでも、アルバイトに勝る給料であるためには、正社員用の給与テーブルにしたがって昇級していく企業にいることが重要です。
給与テーブルが社員に公開されていない企業は、どのような仕組みで評価されて、いつどのようにどこまで給料が上がっていくのかが不明瞭です。
頑張った分、きちんと給料が上がっていくことを公表している企業に転職すれば、アルバイトよりも給料が低いという事態を防ぐことができるでしょう。
「でも転職前に給与テーブルを求職者に見せてくれるか心配」という人は、転職エージェントを有効活用するという方法もあります。
性格的に自分から給料のことを言い出せない人は、転職エージェントを通して給与テーブルを確認してもらい、あなたの希望額を満たしているかどうかと、近い将来的にどれくらいまで給料が上がる可能性があるのかを握っておくことができます。
日本の企業の多くは、なぜか入社前に給与の話をすることをタブーとしていますが、「給料が低いから転職する」「給料が上がらないから転職する」という転職動機を持っている人の場合は、必ず「入社前」に給与について明確にしておくことをおすすめします。
転職しないなら昇進を狙う一択
あなたが今の会社に愛着があって、「給料には確かに不満はあるけど、辞めたくはない」という場合、今の会社で昇進し、給料を上げるしかありません。
ただ、昇進で給料を上げるには、ご存知の通り同僚や先輩、ともすれば後輩とも、限られた役職の椅子を奪い合うことになります。
出世争いという言葉自体は、現代ではあまり耳にしませんが、企業規模が大きいと社内派閥の中でも勢力の大きな派閥に所属し、上司との付き合いも密に、さらに仕事でも結果を残しつつ、他の有力候補者の株を下げたりする必要もあるでしょう。
上記のようなことに全力を注いだ結果、おそらくはサービス残業や接待などの休日出勤も増えて、時給換算したときのあなたの給料がどんどん下がっていく可能性があります。
さらに怖いのは、そこまでして昇進を狙ったにもかかわらず、昇進できなかった時です。
昇進のために費やしてきた時間は全て無になり、また次の椅子を狙って最初からやり直し。
一体何のために働いているのかわからなくなるかもしれません。
昇進で給料を上げるなら、この覚悟を持って臨むか、すでに大きな可能性がある人が目指す方が、自分自身の時給額を下げずにいられるでしょう。
サービス残業のないホワイト企業に転職する
時給換算して給料が下がる理由として「サービス残業の時間=時給が発生しないから、長時間残業した分だけ平均したときの時給が下がる」ことを解説しました。
ということは、サービス残業がない企業に転職すれば、時給換算してもアルバイトより給料が低いという事態は起こらないどころか、給料は上がっていく可能性があります。
たとえば、この記事の前半の例で挙げたAさんで考えてみましょう。
- 額面の基本給:15万円
- 額面の年間賞与:30万円(1ヶ月分×2)
- 手取りの月給:12万円
- 手取りの年間賞与:25万円
- サービス残業:あり(月に平均20時間)
- 勤務時間:平日8時~18時(サービス残業含む)
この「サービス残業の時間がなくなった場合」で考えてみると
額面の時給換算額:サビ残あり:833円(15万円÷20日÷9h)
→サビ残なし:937円
手取りの時給換算額:サビ残あり:666円(12万円÷20日÷9h)
→サビ残なし:750円
「残業時間に残業代が支給された場合」で考えてみると
額面の時給換算額:1,171円
手取りの時給換算額:937円
となります。
法定労働時間を超えた残業には、25%の割増がかかるため、これまでたくさん残業していたのに残業代がつかなかったという人ほど、残業代のパワーに圧倒されるでしょう。
しかし、一番望ましいのは、残業なしの給料が高く、成果に応じてしっかりと給料が上がっていくという仕組みです。
今の勤務先にこのような将来像が見て取れないなら、残業代がしっかりついて、さらに平均残業時間が20時間以内に収まっているホワイト企業に転職することをおすすめします。
サービス残業は、時給換算時の給料を下げる諸悪の根源であり、さらに言えば、あなたの労働者としての価値を下げるものでもあります。
物価の上昇や、これからの生活を考えても、若いうちにホワイト企業に転職しておくことで、しっかり給料を上げつつ、安定した生活を確保できるでしょう。
まとめ:正社員なのに時給換算してアルバイトより給料が低かったら転職を考えるのがベスト

自分のビジネスパーソンとしての価値を測るには、「時間単価」で考えてみることが大切です。
それが時給換算したときの額に現れます。
もしもあなたの今の勤務先で、時給換算してみたら最低賃金を下回っていたという場合は、迷うことなく転職することをおすすめします。
労働者としてのあなたの価値を下げ続けると、転職自体が難しくなるからです。
時給換算してみて、アルバイトよりも時給が低いと感じたら、給料を上げることをどれくらい重視しているのか自分の中で整理してみましょう。
給料を上げたいと強く思っている場合、給与テーブルを入社前に公開してくれる企業や、そもそもサービス残業がないホワイト企業に転職することで、あなたの時給を上げていくことができるでしょう。
