転職活動をしていると、面接で「前職の年収ベースを教えてください」などと、前職の給与を質問されることがあります。

しかし、前職の給与が実際に低かった場合、そのまま答えると、応募先にもし内定をもらったとしても、一般的な基準よりも少ない給料しかもらえないのではないかと懸念する人もいるようです。

そこで今回は、転職面接で前職の給与を質問する理由や、聞かれた時の正しい答え方について解説します。

転職面接で前職の給与を質問する理由とは?

一次面接ではあまり聞かれませんが、二次面接でいよいよ採用が近づいてくると、多くの面接官が「差し支えなければ、前職のお給料を年収ベース(月額ベースの場合もある)で教えてください」と質問してきます。

正しい答え方で返すためには、面接官が「なぜこの質問をしてくるのか」を理解しておいた方がよいでしょう。

ここでは、面接官が前職の給与を質問してくる理由について紹介します。

正直に答えるかどうかを見ている

あとで詳しく解説しますが、前職の給与は、実は調べようと思えば調べることができます。

面接官がすでに応募者の前職の給料を知っていて、この質問をわざわざしてくる場合は、「面接で自分を実際よりも大きく見せるために嘘をついていないか」を調べるという目的があるでしょう。

実際に、転職によって給料アップを目指す応募者の中には、実際にもらっていた給料よりも多い額を答え、「転職によって給与面でもレベルアップしたい」と伝える人もいます。

面接官はこのような悪質な回答に騙されません。結果的に嘘をついていたことがバレて、心証が悪くなれば、よほどのスキルや実績がなければ内定の道からは遠くなるでしょう。

欲しい人材が給与面で内定辞退する可能性を見ている

給料についての質問をされた場合、面接官はかなりリアルに採用する方向で応募者を見ている、と考えることができます。

しかし、一方で「せっかく内定を出しても、のちに提示された給料を見て、前職よりも給料が低いという理由で内定辞退されるかもしれない」という考えも巡っているのです。

優秀な人材を雇用したい面接官としては、最初に応募者から前職の給料を聞いておいて、「詳しくは後でお伝えしますが、前職よりも待遇は良くなります」と伝え、内定辞退を防ぎます。

そのためにも、応募者から前職の給与を聞いておく必要があるのです。

希望の年収を提示させる流れにつなげるため

転職活動では、「自分の価値をどれくらいだと思っているか」を尋ねることで、前職までに間に積み重ねてきたスキルや実績を説明させる場面があります。

面接でよくある流れとして、「前職で自分にしかできないと言える仕事はなんですか?」「前職で身につけたスキルや実績を教えてください」と質問してきて、応募者が回答した内容を受け、「それでは、そのスキルや実績に対し、どれくらいの年収が適切だと思いますか?」と、自分自身につけている価値を探るのです。

応募者が適切だと思う年収を答えた後で、面接官が「ちなみに、前職の給料はどれくらいでしたか?」と尋ねることで、面接官は「希望の年収」「実際に自分につけている価値」「前職での実際の評価」の全てを知ることができるのです。

「希望の年収」は、前職では評価されなかった悔しさが現れる場面でもあります。

ここをどのように説明するのか、つまり前職で年収500万円だった人が、なぜ転職先で年収700万円を希望して、200万円もアップさせるだけの理由・根拠があるのかをいかに示すかによって、転職による年収アップが現実になるかどうかが変わるでしょう。

嘘をついても前職の給料はバレる!?嘘はついても無駄?

転職面接を受ける側として気になるのが、「前職の給料、ちょっとくらい盛ってもバレないのでは?」ということです。

転職活動の裏側を知らない人や、初めて転職活動をする人にとっては、「ちょっとくらい嘘をついてもバレない」と思うかもしれません。

しかし、1つ前のセクションで紹介したように、実は内定が決まって、本当にその企業で働くことになった場合、簡単に転職先には「本当の前職の給料」がバレてしまうのです。

そのカラクリが、内定後に転職先に提出する「源泉徴収票」です。

内定が決まってしばらくすると、保険の関係で経理の担当社員から「前年度の源泉徴収票を提出してください」と要求されます。

源泉徴収票を見れば、前職の年収が当然バレてしまいます。

純粋に保険関係でのみ源泉徴収が利用されることがほとんどですが、まれに「そういえばこの社員、面接で前職の給料すごくよかったな。本当かな?」と疑われていた場合、経理だけでなく面接官や直属の上司が見ることもあるのです。

この時、あなたが面接で前職の給料を盛った額を提示していた場合、すぐにバレてしまいます。

と同時に「嘘つき」のレッテルが貼られてしまい、せっかく転職に成功したのに働きにくい人間関係になってしまった…ということもあり得るのです。

転職面接で前職の給料を聞かれた時の正しい答え方

では、転職面接で前職の給料を聞かれたら、どのように答えれば内定につながりやすいのでしょうか。正直に答えたい気持ちはあるものの、今の仕事よりも低い給料で転職する事態は避けたいものです。

ここでは前職の給料を聞かれたときの正しい答え方を紹介します。

嘘はつかない方がいい!正直に給与を答えよう

まず、記念受験ではなく本当に転職したい企業の転職面接を受ける場合は、嘘をつかずにしっかり前職の給料をありのままで答えましょう。

本当に採用された場合、源泉徴収票によって遅かれ早かれ真実の給与を知られてしまいます。サバを読んで、実際よりも多額の年収を答えていた場合、信用を大きく落とすことになるでしょう。

そうならないように、面接では正直に前職の給与の額を伝えましょう。

少ない給与だったとしても、それはあなたの価値がそれだけしかなかったという訳ではなく、給与水準が低い業界・企業にいたことも関係しているかもしれません。

給与交渉の流れに持って行くなら具体的な希望年収も答えよう

転職先で前職よりも高い給料で働きたいと考えている場合、「前職の給料は?」という質問を使って、給与交渉に持って行くのも、正しい答え方の一つです。

この場合は、このように答えるとよいでしょう。

「前職の年収は500万円ほどでした。ただ、私は前職でリーダーとなったプロジェクトにおいて、ある商材の売上を30%アップさせることができました。採用された暁には、前職よりもさらに上の業績を残すよう努めます。」

このように前職での実績を訴求することで、前職の給料を正直に答えながらも、転職後の給料を上げるチャンスに結びつけることができるでしょう。

まとめ:前職の給与が低い=転職後の給与が低くなる訳ではない!面接では本当の給与額を答えよう

前職の給与が低い人ほど、面接で質問されたときに「給与が低いと、それくらいの価値しかないと思われて、採用されないかも」という考えに至りがちです。しかし、面接官が前職の給与を質問するのは、転職後の給与を決めるためではありません。

転職先には転職先の給与テーブルがあり、優良企業ほどきちんとした給与体系が整っているため、前職の給与が低かったからといって転職後の給料を下げることができないのです。

転職後の信用問題にも関わりますから、質問されたら正直な額を伝え、それでも不安な場合はその他の自己PRで自分の市場価値をきちんとアピールするようにしましょう。