転職活動中、あるいは転職を考えている方の中には、「応募先に前の会社に連絡されたらどうしよう」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

履歴書などの応募書類や面接で、実際の業務内容や自己像を少しでもよく見せようと、多少なりとも話を盛ってしまう人も多い中、前の会社に連絡される「前職調査」が本当にあるのかどうか、ハラハラするものです。

そこで今回は、前職調査は本当に行われているのか、また行われる場合と行われない場合の違いについても解説します。

前職調査とは?前の会社に何を確認しようとするのか

前職調査とは?

転職する前の会社に連絡し、応募者に関する情報を聞き出そうとすることを前職調査と言います。

多くの場合は書類選考を通って、面接も通り、最終選考かその一段階前までに残った応募者に対して行われます。

調査内容としては、「勤続年数や業務実績」を聞かれることが多いようです。

しかし、勤続年数や業務実績をわざわざ前の会社に連絡してまで質問するのはなぜでしょうか。

勤続年数を調査する理由

人気のある企業には、玉石混交、様々な人が応募してきます。

中には絶対に採用されたいという一心から、前職の経歴を偽って応募してくる人がいるのです。

実は、このような嘘をついてくる人は残念ながら一定数います。企業としても前職調査をしないと思ってもいなかった人材を雇用することになり、大きなリスクを背負うことになってしまいます。

そのため、勤続年数を尋ね、「本当にその会社に過去在籍していたか」を確認しているのです。

中には在籍したこともない大手企業の名前を職歴に記載して、あたかもすごい実績があるように見せかける人がいるため企業側も見極め作業が必要となります。

勤続年数を質問するだけで「いえ、そのような者は弊社に在籍していたことはございません」と言われれば、職歴が嘘だということがわかります。

勤続年数を知りたいというよりは、本当に前職の職場が事実かどうかを確認するのが目的だと言えるでしょう。

業務実績を調査する理由

業務内容を尋ねることで「職務経歴書に書いてある内容の真偽」を確認することができます。

中にはやってもいないプロジェクトに参画していたと嘘をつき、出してもいない成果を出したと偽る人もいるため、業務実績を確認するのは重要です。

調査の方法は電話が一般的です。

電話口で「御社の○○プロジェクトチームだった××さんに確認したいことがあるのですが」などと聞いて、「××は違う部署の社員ですので、プロジェクトには参画しておりません」という返答が来れば、職務経歴書が嘘であることが発覚します。

前職での地位なども確認するために、業務実績を確認する会社は多いようです。

前職調査は本当に行われている?

電話での調査はある?

企業が応募者の経歴について真偽を確認し、本当に優秀で会社にとって有用な人材のみを採用するために行われる前職調査。

では、このような前職調査は今現在、本当に行われているのでしょうか?

ここでは前職調査の実態と、前職調査に必要な手続きについて紹介します。

前職調査は基本的にはなし!前の会社への連絡には応募者の同意が必要

平成15年に公布、平成17年に全面施行された個人情報保護法により、実際は事前に誰にも許可を取ることなく前職調査を勝手にすることは、ほとんどないと言って良いでしょう。

前職の会社としては、あなたが会社に在籍していたかどうかということや、勤続年数・業務内容について勝手に第三者に情報を漏らす事は禁止されています。

リテラシーの低い会社の場合、勝手に勤続年数を教えてしまう場合もありますが、法務がきちんと管理されている会社なら、情報は漏らさないはずです。

(参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」)

もしもどうしても前職調査が必要な場合には、あなたに対して転職希望先から、前職調査をしてもいいかという確認があるはずです。

転職先は前職調査に関する同意書を作成し、あなたに同意書へのサインを求めるでしょう。

このプロセスなしでは基本的に前の会社に連絡することはできないため、安心出来ます。

ただし、転職先が現職・前職と同業他社の場合は、異業種転職の場合よりも前職調査が起こりやすいとも言われています。

応募者がどれくらいの即戦力になるのかを確認するために電話してくるのですが、ここであまりいい調査結果が得られないと採用に至らないケースも多いのです。

同業他社に転職しようとしている場合は、前の会社に連絡が行く可能性が高くなるため、受けるか断るか、事前によく考えておきましょう。

前職調査、同意しなければ怪しまれるのは当然!断る方法はある?

どうしても転職を成功させたくて、履歴書や職務経歴書を実際よりも盛ってしまったことがあり、前の職場に連絡が行ったら不都合だという人は、もちろん同意書にサインしなければ、前職調査を免れることができます。

しかし、転職先からすれば、「前職調査を断るのは、何か後ろめたいことがあるからなのでは」と怪しんでしまうのも当然です。

では、どうやったら前職調査を怪しまれずに上手に断ることができるのでしょうか。

一番自然なのは、「現職の勤務先には内密に転職活動を進めているため、円滑な退職のためにも前職調査への同意へはできかねます」と転職先の採用担当に連絡することです。

今の仕事を続けながら転職活動をする事は法的にも禁止されておらず、労働者の自由の範囲です。

そのため「転職活動中であることを内緒にしているから」と伝えれば、何も不自然な点はなく前職調査を断ることができるでしょう。

また、本当に機密性の高いプロジェクトに関わっていた場合は「前の職場で機密性が高い仕事をしていたため、お問い合わせいただいても明確な回答は得られない可能性が高いです」という理由で断ることもできます。

断ること自体は全く問題ないですことですが、断る際は自信を持ってきちんとした理由を用意したうえで回答内容をしっかり伝えることで、怪しまれずに前職調査を断ることができるでしょう。

まとめ:前職調査を断るときは事前に理由をしっかり考えておこう

転職希望先の企業があなたに無断で転職活動中に前の会社に連絡することは、個人情報保護法に抵触するため基本的にはできません。

しかし、一部のリテラシーが低い企業の中には、個人情報保護法に抵触するという意識もなく、前職調査をしてしまう会社が未だあるのも事実です。

一般的な企業であれば前職調査が必要な場合は、あらかじめあなたに同意書を提示してサインを求めてくるでしょう。

サインを断ればあなたの同意が得られなかったということで、前職調査が行われる事はありません。

ただ、何の理由もなくサインを断ってしまえば、もちろん転職先としても「何かやましいことがあるのかもしれない」と怪しんでしまうでしょう。

特にあなたがまだ離職しておらず、現職に就いたまま転職活動中なのであれば、「転職活動していることを知られたくないから」という理由で断れば、特に悪い印象を持たれることもないでしょう。

特に困ることがなければ、前職調査の依頼があったら受け入れた方が、内定につながる可能性は高くなります。

スムーズな転職活動のためにも、もしも依頼があったらどうするかをあらかじめて決めておき、断る場合はこの記事を参考に、断る理由を細かく考えておくことをおすすめします。