既卒とは、すでに高校・専門学校・大学などの最終学歴となる教育機関を卒業している人で、なおかつまだ社会人経験がない人を指します。
新卒と比べると就職・転職活動の中で不利になるという話もありますが、本当なのでしょうか。
そこで今回は、既卒と新卒の違いを明確に比べながら、就職活動・転職活動に与える影響について解説します。
既卒と新卒はここが違う!それぞれを種類別に解説
年齢的には大きな違いがない既卒と新卒ですが、実は明確な相違点があります。
ここではその相違点を解説しながら、新卒・既卒として考えられるケースについても紹介します。
一番の違いは、学校を卒業しているか・現役の学生か
既卒と新卒の一番の違いは、「既に最終学歴となる教育機関を卒業しているかどうか」です。
既卒は文字通り既に卒業していますが、新卒の場合はまだ在学中であり、社会的立場としては「学生」になります。
では卒業後何年までを「既卒」と呼べるのか、という問題ですが、こちらは明確な定義がありません。
つまり、大学卒業後3年でも、5年でも、「既卒」と呼べることになります。
既卒は新卒よりも枠が曖昧であるため、企業側にも「新卒枠」というワードが存在する一方、「既卒枠」というワードはあまり一般的ではありません。
新卒にも2種類!新卒で就活中の場合・すでに新卒で就職している場合
「新卒」というワードにも、厳密に言えば2通りの意味があります。
1つめは、上記で紹介したように、「大学3・4年で就職活動中の学生」という意味です。大学を卒業した翌年度に入社を目指している大学生全体を指して「新卒」と呼びます。
2つめは、「すでに新卒枠で入社して働いている社員」という意味です。こちらは主に企業側目線で使われる意味となります。
「うちの課の新卒、人事が太鼓判押してたけど、評判通りだよ」「今年の新卒の歓迎会はリモートでやろう」などのように使われます。
既卒は3種類!フリーター・無職・就職浪人
既卒の場合は、以下のように3種類の立場が考えられます。
- フリーターとしてアルバイトをしている人
- 選択してあえて就職していない人
- 就職浪人して次年度既卒枠を狙う人
1つめは、フリーターとしてアルバイトをしているという立場です。
就活はやってみたものの、内定が取れなかったり、就活を始める時期が遅すぎて波に乗り切れなかったり、公務員を目指して試験勉強していたものの不合格で一般企業は1社も受けていなかったり…と、様々なケースがあります。
内定は取れなかったものの、金銭的に働かないわけにもいかず、アルバイトをしているパターンの既卒です。
2つめは、選択的無職という場合です。就活自体を放棄し、そもそも企業に雇用されて働くことを選択しなかった人が該当します。
意識の高い選択的無職の場合は、のちに起業を考えていて、その準備期間として考えている人がいます。
そうではない場合、「新卒で就活」することに価値を見出せず、なかば悟りを開いたような状態で、無職生活を続けているパターンの既卒です。
3つめは、就職浪人として次年度既卒枠を狙っている場合です。
主に大手企業を狙って就活に励んでいたものの、滑り止めで受けていた企業からしか内定をもらえず、滑り止めに入社するくらいだったら半年から1年就活時期を遅らせている場合がこれに当てはまります。
就職浪人の場合、次年度にかけている思いが強いため、浪人中に人脈を築いたり、最新の就活データを入手したり、かなり活動的なパターンの既卒です。
既卒・新卒どっちが有利?転職活動に影響はあるのか?
既卒・新卒では、転職活動での内定の出やすさに影響はあるのでしょうか。
実は、既卒を欲しがる業界と、新卒を欲しがる業界・企業には違いがあります。ここでは、転職市場における既卒・新卒が受ける影響について紹介します。
新卒はポテンシャル採用で大手企業が欲しがる人材
「新卒の方が既卒よりも有利」と言われるのは、新卒は社会人としてまだ何色にも染まっていないまっさらな状態だと思われているからです。
会社のローカルルールにも従い、ひたすら社訓を教え込むことで、会社の意に沿って貢献してくれる人材になるだろう、と期待されています。
さらに、新卒の場合は伸びしろ、すなわちポテンシャルがあると考えられています。
書類審査や面接の中で、「この人は、入社すればこの分野で活躍してくれそうだ」というように、入社後の活躍を見越した先行投資という形で採用されやすいのです。
しかも、このようなポテンシャル採用や、社会人としてゼロから教育したいという理由で新卒を採用するのは、主に大手企業です。
ポテンシャル採用は「教育」によって伸びることが期待されています。
この時代でもまだ終身雇用を目指せるような大手企業ほど「教育期間」が長く、成長を待てる余裕があるため、大手ほど新卒採用枠を拡大する傾向があります。
人手不足の業界で求められることが多い
一方で、既卒での大手企業への転職は難しいと言われています。
ブランク期間に何をしていたかにもよりますが、大手企業の場合は「新卒採用」か「キャリア採用」の2択がメインです。
新卒カードを使うか、他社で即戦力となるキャリアを積んできた人材でないと、大手企業への転職は難しいとも言えます。
しかし、既卒でも採用枠があるのが「人手不足の業界」です。
厚生労働省の調査によると、「人手不足感や欠員率をみると、産業別・企業規模別に大きな差がある」という報告があります。
具体的には、「運輸業・郵便業」「サービス業」「医療・福祉」「宿泊業・飲食サービス業」「建設業」において人手不足感が高まっているそうです。(参考:厚生労働省「人手不足や入職・離職等の現状」
上記のような業界では、「既卒歓迎」というタグのついた求人も多く、転職しやすくなっています。
転職活動では第二新卒が有利!既卒ならブランク期間の説明が重要に
転職市場では、新卒に次いでどの業界でも需要が高いのが「第二新卒」です。
第二新卒には明確な定義がありませんが、「新卒で他社で働いた経験が1〜3年程度ある社会人」と表すことができます。
第二新卒は、社会人としてのマナーや、ビジネススキルをある程度積んできたにも関わらず、新卒とほぼ同様の伸びしろが期待できます。
企業側としては、イチから教育するコストも省けて、しかもある程度最初から仕事を任せることができるため、利益に直結するまでの時間が短いというメリットがあるのです。
しかも第二新卒は大手企業、ベンチャー、中小企業など、幅広く需要があるため、転職活動を有利に進めることができるでしょう。
既卒で全く社会人経験がないというかたの場合、重要になってくるのが「ブランク期間に何をしていたのか」をどう説明するかです。
資格試験の勉強をしていた人もいれば、完全に働くことを諦めて実家で好きなことをしていたという人もいるでしょう。
もちろん正直に説明するという選択肢もありますが、転職活動ではあまり正直すぎても採用には直結しにくいものです。
ブランク期間の説明としては、以下のような例が挙げられます。
- 「アルバイトをしながら◯◯業界(バイト先と転職先の業界が同一である方が説明しやすい)で働くことの適正を実感し、御社へ応募させていただきました」
- 就活期間中では自分の適正が何かわからなくなり、一から自己分析と業界分析をし直して、自分自身を立て直すことに注力していました」
うまくブランク期間を説明することで、新卒と同じようにとはいきませんが、既卒歓迎の求人には受かりやすくなるでしょう。
まとめ:既卒は大手企業には受かりにくい傾向あり!人手不足の業界を狙えば既卒の影響を受けにくい
既卒であることの影響は、応募できる求人数の時点で確かにあります。
新卒枠を大々的に確保しているような企業では、そもそも既卒枠を設けておらず、最初から応募の対象外にしている傾向があります。
しかし、既卒であることの影響を受けにくい人手不足の業界を狙っていくことで、採用の可能性は高くなるでしょう。
運輸、サービス業、福祉業界など、既卒募集が多い業界を集中的に受けることによって、早い段階で内定がもらえるかもしれません。
応募の際には事前にブランク期間をどう説明するかきちんと考えておくことで、既卒の影響を受けずに内定に近づくことができるでしょう。