新卒で入社した会社を短期間で退職した既卒・職歴ありの人が転職活動する際、ライバルとなるのがキャリア的に最も近い新卒者です。

実は、就職・転職市場では、既卒職歴ありの人の方が新卒の人よりも有利になる場合があります。

そこで今回は、既卒職歴あり・新卒の違い、既卒職歴ありの人は新卒求人に応募できるのか、転職活動で既卒がどのように扱われるのかについて解説していきます。

どう違う?既卒職歴ありと新卒の定義は?

新卒とは、今年度中、つまり3月に大学・専門学校・高校を卒業する学生で、その後すぐに就職する予定の人を指します。

大卒に限らず、最終学歴予定の教育機関を卒業する予定の人は、「新卒」ということになります。

一方既卒職歴ありとは、すでに最終学歴となる教育機関は卒業し、一度は新卒で就職したものの、短期間で退職した人を指します。

しかし、2010年のリーマンショックによる不景気の波を受けて、厚生労働省は「既卒職歴ありでも、卒業してから3年以内なら、新卒枠で応募できる」と提言しました。(参考:厚生労働省 「3年以内既卒者は新卒枠で応募受付を」)

このルールは2021年の今でも、特に取り消された事実はありません。

つまり、既卒職歴ありと新卒では、応募条件という視点から見れば卒業から3年以内の場合は大きな違いはないということになります。

応募できる求人が違う!既卒職歴ありが応募できないとは?

新卒と既卒職歴ありの定義の違いが明確になったところで、果たして両者の間に応募できる求人に違いはあるのでしょうか。

実は、場合によっては新卒は応募できない求人もあれば、既卒職歴ありが応募できない求人もあります。

ここでは、それぞれの条件で応募できる・応募できない求人の違いについて紹介します。

新卒は既卒・キャリア採用求人には応募できない

新卒の人が応募できない求人は、「実績のある即戦力となる人材」を募集するキャリア採用求人です。

キャリア採用の場合、「社会人経験3年以上」などの条件が添えられているため、新卒で社会人経験がない人は応募できません。

給与などの労働条件が高く、魅力的なキャリア採用求人も多いのですが、新卒が応募したとしても、書類審査の時点で落とされてしまいます。

つまり、新卒は新卒枠でしか就活できないという大きな制約を受けていると言ってもよいでしょう。

既卒は新卒限定求人に応募できな場合もある

既卒が応募できない求人は、新卒枠としてリクナビやマイナビに掲載されているような求人です。

保守的で財源が豊かな大企業ほど、新卒を育てる教育コストが豊富に確保されているため、このような新卒限定求人を出して、「まだポテンシャルの高いうちに採用して、会社のカラー染めていく」のです。

新卒求人の場合、キャリア採用求人と異なり、比較的長期間のメンター制度があり、メンターとなった会社の先輩社員から仕事のやり方を細かく教えてもらうことができます。

既卒職歴ありの人の中で、職歴が特に短く、社会人経験を十分積むことができなかった人の場合、できればメンターに付いてもらって、丁寧に教えて欲しいという人も多いでしょう。

しかし、新卒「限定」求人の場合は、既卒という時点で応募書類を見た採用担当から、審査対象外として見られてしまうのです。

既卒職歴ありが応募できる新卒求人の見つけ方

既卒で職歴はあるけど、3ヶ月や半年で退職してしまい、キャリア採用求人の「社会人経験3年以上」という条件も満たせない…。

このまま諦めてアルバイトなどの非正規雇用で働くしかないのかな…と落胆している人も多いでしょう。

しかし、実は既卒職歴ありでも応募できる新卒求人があるのです。

厚生労働省が定義した「新卒から3年までは、既卒も新卒扱いにする」という言葉通り、新卒から3年以内の場合は、職歴があったとしても新卒とみなしてもらえます。

具体的な見つけ方は、リクナビやマイナビのような新卒求人を扱う就活サイトで希望の業種・職種を選び、選択項目の最後の方にある「応募資格に既卒者を含む」という項目にチェックを入れて求人を絞り込むだけです。

業種・職種によってはかなり多くの求人をピックアップすることができます。

既卒がどう扱われるかは退職理由次第!場合によっては不利になることも

転職活動の中で既卒職歴ありという人材がどんな扱いをされるのか、気になる人は多いでしょう。

一般的にあまりよい印象を持たれにくいのは事実ですが、実は重要なカギとなるのが「退職理由」です。

ここでは、転職活動で扱いがよくなる退職理由と、扱いが悪くなる転職理由に付いて紹介します。

退職理由がネガティブだと、辞めグセのある人と扱われる

転職活動の中で既卒職歴ありの人の扱いが悪くなるのは、退職理由がネガティブな内容の場合です。

既卒職歴ありの印象が悪くなりやすいのは、この退職理由に偏見があるせいでしょう。

「短期間で退職しているから、よほどの理由が本人にあったんだろう」という偏見の原因となるのは、退職理由を次のような内容にしていることが考えられます。

「人間関係に恵まれなくて」「給料が思ったよりも低くて」「思っていたような仕事内容ではなくて」

このように、たとえ事実だとしても、聞いた人がネガティブな印象を持つような退職理由の場合、採用担当は「どんな環境に置かれても、言い訳をして辞めグセのある人」という人物像に写ってしまうのです。

扱いが悪くなり、採用されにくい既卒職歴ありの人の多くが、退職理由を上記のようなネガティブなものとして面接官に伝えているのではないでしょうか。

退職理由がポジティブだと、新しい環境に挑戦する伸びしろのある人と扱われる

反対に、既卒職歴ありでも扱いがよく、採用されやすいのは、退職理由がポジティブな内容・表現の人です。

既卒職歴ありでも、退職理由が納得できる内容であり、なおかつ前向きな表現をする人は、面接官の目にも印象良く映ります。

「確かにアットホームな職場だったが、ほかの職員に甘えず自発的に動ける環境に身を置きたかった」「ずっと目標だった資格取得に集中するために一度退職した」など、前向きな退職理由であれば、現状に満足せず、もっと成長を求める伸びしろがある人材だと扱われるでしょう。

まとめ:既卒職歴ありでも応募できる新卒求人はある!書類と面接で新卒との差別化を図り有利に進めよう

既卒職歴ありの人は、企業によってはまだ新卒と同じ扱いとして、新卒求人に応募することができます。

キャリア採用求人が求める社会人経験年数に達していない場合は、この記事で紹介したような「応募資格に既卒者を含む」求人に応募しましょう。

この場合、全く社会人経験がない新卒よりも、短期間とはいえ経験のある既卒職歴ありの人の方が有利になることがあります。

退職理由をポジティブな内容でまとめ、前職で身につけたビジネスマナーやスキル・知識などを応募書類や面接でアピールすれば、新卒枠なのに即戦力になりやすい人材としてとらえてもらうことができるでしょう。