高卒で就職した人の中には、大卒の同期や友人と比べて自分の給料が低すぎる、いつまで経っても給料が上がらないと悩んでいる人も多いでしょう。
そこで今回は、高卒で給料が上がらないのは本当か、またその原因と、今からできる解決方法について解説します。
高卒と大卒の生涯年収の差は歴然!確かに高卒は給料が上がりにくい場合も
高卒で就職した人と、大卒で就職した人とでは、給料の上がり方が違うことがあり、一生同じ企業で働いたときの生涯年収が大きく変わることになります。
ここでは、高卒と大卒の生涯年収の差について紹介しながら、高卒の給料が上がりにくい実態について紹介します。
高卒と大卒、生涯年収には6000万円の差!
厚生労働省の調べによると、高卒と大卒とでは、平均年収に約100万円ほどの差があることがわかっています。
経歴 | 平均年収 |
---|---|
高卒 | 288万 |
大卒 | 399万 |
高卒の平均年収は288万円、大卒の平均年収は399万円となっており、高卒の方が大卒に比べて100万円ほど年収が低いと言えます。(参考:厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」)
年収で比べても高卒の方が低い傾向にあるのですが、実は初任給の時点で高卒と大卒の間には大きな差が開いているのです。
経歴 | 平均初任給 |
---|---|
高卒 | 16万 |
大卒 | 22万 |
一般社団法人労務行政研究所の調べによると、高卒の初任給の平均は16万円であるのに対し、大卒の初任給の平均は22万円となっています。
この差が保たれたまま定年まで勤務した場合、生涯年収は大卒よりも高卒の方が6,000万円も安くなる計算です。(参考:一般社団法人労務行政研究所「2017年度新入社員の初任給調査」)
こうして数値を見てみると、高卒の給料は確かに大卒よりも上がりにくい傾向があり、それが定年まで続く傾向も見られます。
生涯年収は平均値!すべての高卒が当てはまるわけではない
確かに高卒の給料は、大卒に比べて上がりにくい傾向があるものの、この「生涯年収の差は6000万円」「初任給の差は6万円」という数値を見るときには注意点があります。
それは、「この給料の差は、あくまでも平均値であり、数値は幻」ということです。
例えば、身長で考えてみましょう。
180cmの人が5人、145cmの人が1人いる6人の身長の平均値は「174cm」ですが、この集団には「実際に174cm」の人が存在するわけではありません、
平均値を算出するにあたり、計算から生まれた「幻の身長の人」がいるように見えるだけです。生涯年収や初任給の計算も、すべてが「平均値」です。
つまり、高卒でも大卒よりたくさん稼いでいる人もいれば、大卒でも高卒より給料が上がらない人もいるということになります。
ここで大切にしたいのは、「自分よりも給料が上がらない高卒」に注目するよりも、「自分よりも給料を上げることに成功した高卒」に注目して行動を模倣することです。
一方で、自分と同等、もしくは自分よりも給料が上がっていない人を注目する場合は、客観的に「なぜ同じ高卒なのに給料が上がりにくいのか」という視点で分析してみましょう。
なぜ高卒は給料が上がらないのか?原因3つを解説
高卒で就職して5年経つのに、給料が初任給から数百円しか上がっていないという人もいます。
ここでは、一部の高卒の給料が上がりにくい3つの原因について解説します。
原因1.給与テーブルが違うから
一番に考えられる原因は、「高卒と大卒で給与テーブルが異なっているから」というものです。
給与テーブルという言葉は、事務サイドで勤務したことがない方は聞いたことがないという人もいるでしょう。
給与テーブルとは?
給与テーブルとは、等級(ランク)に応じて決められた給与であり、その給与を決めている表そのものを指す言葉。
等級ごとに月給と、その月給に応じた役割(メンター、マネジメントなど)が割り振られていることが一般的です。
給与テーブルがあることによって、昇級・昇給が「管理職に気分次第」ではなく、客観的に給料が決められて評価されることが可能になります。
「この人は、こういう仕事ができるから、この等級。だからこの給料」というように、仕事ぶりに対して的確な報酬を与えることができるという会社側のメリットにもなるのです。
ところが、この給与テーブル自体が「高卒と大卒で分かれている」ことがあります。
高卒で就職した人と大卒で就職した人が同じ年数働き、同じような役割を果たしたとしても、評価される給与テーブルが異なるため、高卒の方が給料が上がりにくくなっているということです。
2021年10月には、「大卒だと思って15年間雇用していたら実は高卒で、過払いした400万円の返還を労働者に命ずる」というニュースがありました。(参考:読売新聞オンライン「高卒なのに「大卒」と給与算定、15年間で400万円過払い…返還求める方向」)
このニュースは、「高卒と大卒の給与テーブルってそんなに違うんだ」「大卒だと思えるくらい働き方には遜色なかったのに、高卒だとわかったら評価されないんだ」と、多くの反響を呼びました。
採用側が把握した学歴に間違いがあっただけで、本人が詐称したわけでもないのに、400万円返さないといけないのもおかしいのですが、そもそも15年間で高卒と大卒の間に400万円分の差が開くということも明らかになったのです。
給与テーブルが異なるだけで、高卒の方が給料が上がりにくいという事実を証明するニュースでもありました。
原因2.学歴ではなく年齢で査定されているのかも
給与テーブルが高卒と大卒で違うという理由のほかに、「年齢で査定されている」場合もあります。
あなたが特に20代の場合で、年功序列をいまだに重んじる企業に勤務している場合は、特にその傾向が強いかもしれません。年功序列ということは、年齢が高い人ほど給料が高くなるということです。
地方公務員などではこのような年功序列の査定が行われており、保守的な企業もこれにならって年齢とともに徐々に給与額を引き上げていきます。
この場合は学歴は関係なく、年齢で査定されるため、若い人ほど給料が上がりにくいということになります。
たとえ少し年上で自分よりも仕事ができない人でも、年齢が高いというだけで、自分よりも多く給料をもらっていることに腹が立つ人も多いでしょう。
しかし、このような年功序列の企業では、年齢を重ねるか、役職に就くしか給料を上げる道がないのです。
原因3.評価する上司が学歴バイアスが強いと給料が上がりにくいこともある
最後の原因は、あなたの給与を評価する上司の価値観です。
きちんとした人事評価の軸が決まっている企業では起こらないことですが、いまだに日本では「上司のさじ加減」で給料が決まる企業が存在しています。
その上司が「大卒は高卒よりも勉強を頑張った証。だから大卒の方が給料が高いのが当たり前」という価値観の場合、学歴で給料を査定されてしまうのです。
仕事の専門性が高く、大学で専門の研究を重ねてきた場合で、新卒から数年間の間だけの場合は、上記の理由でもまだ認められるでしょう。
しかし、働き続けるうちに現場で力をつける高卒の人も多いため、「現場に出てからの成長率」を考慮しない的外れな評価だと言えます。
現実にはこのような評価軸で給与を査定する人もいるため、上司の価値観によって給料が上がりにくいというケースもあるのです。
高卒でも大卒以上に給料を上げるための方法を解説
高卒の給料が上がりにくい原因を把握した上で、「どうしたら給料が上がるのか」について考えてみましょう。
基本的には転職が近道ではありますが、一部今の仕事を続けながら収入を増やす方法もあります。ここでは、高卒でも大卒以上に給料を上げていくための具体的な方法について解説します。
給与テーブルを学歴で分けない企業に転職する
高卒で給料が上がらないことに悩んでいる場合は、まず給与テーブルが学歴で分かれていない企業に転職することが挙げられます。
今の会社が学歴で給与テーブルを分けていている場合、あなたがどんなに仕事を頑張ったとしても、同じような働きをする大卒より給料が上がりにくいという事実は変えられません。
この場合、会社を変えるよりも、自分が転職してしまった方が、圧倒的に早く給料を上げることができるでしょう。学歴で給与テーブルを分けていない企業を見分けるのは簡単です。
企業の新卒求人をマイナビ・リクナビのような就活サイトで検索したり、一般的な求人サイトで検索して、「新卒の給与が高卒と大卒で分かれているか」を確認すれば良いのです。
新卒の時点で給与に差があり、しかもその差が大きい場合は、残念ながら給与テーブルから学歴で分けている企業でしょう。
このような企業は避けて、「新卒なら一律で給与が同じである企業」を探すことで、学歴によって給料が上がらないという事態を回避でき、本人の力量によって給料を上げることができるでしょう。
具体的には、外資系企業やベンチャー・スタートアップなどは新卒から給与テーブルを分けていることが少なく、実力重視である傾向があります。
どこから検索したらいいかわからないという人は、上記のような企業の中から探してみましょう。
働きながら通信系の大学を卒業する
今の会社に勤務したまま、高卒でも給料を上げたいという場合、今からでも大卒の資格を取得するという方法もあります。
新型コロナウイルスの影響を受け、以前よりも多くの大学が通信課程を開いています。
放送大学のように、基本的には自宅で通信学習を行い、土日でスクーリングを受けて大学の単位を取得し、働きながら大卒を目指すことは可能です。
ただし、普通に仕事を続けながら大学の勉強も進めるというのは、かなり精神的にも身体的にも辛い部分があります。
単位を落として進級できず、上限の8年かけてやっと通信制大学を卒業した人もいます。
給料を上げるために大学の学費を払うというのも、コストが回収できる見込みがあれば良いのですが、そうでなければ難しいでしょう。
それでもあなた自身に「学歴」に対する引け目があって、自分のために大卒の資格を取りたい、そのおまけとして給料が上がればいいという感覚であれば、通信制大学で大卒を目指すのもオススメです。
副業で大卒の給料を上回る収入を得る
本業の給料が、高卒であることを理由に上がらないのであれば、副業で稼ぐという方法もあります。
トヨタが終身雇用を保証するのが難しいと発表した2020年以降、副業を認める企業も増えており、副業に関するネット記事や動画も増えて来ました。
本業の給料を上げるのが難しく、転職するほど今の仕事に不満がないという場合、副業という選択肢もオススメです。
今の仕事のスキルが生かせるのもでもいいですし、これを機に「前からチャレンジしてみたかったこと」「自分では自覚がないけど、よく家族や友人に褒められるスキルがあること」で副業を始めてみるのも良いでしょう。
まとめ:保守的な企業ほど高卒の給料は上がらない!転職・通信大卒・副業で大卒より給料を上げよう
確かに高卒と大卒では、「平均値で比較した場合」収入に違いがあり、高卒の方が給料が上がらない傾向があるようです。
特に大企業・保守的な中小企業などは学歴によって給与テーブルが分かれていて、努力しても給料を上げるのが難しいでしょう。
これから給料を上げていくためには、給与テーブルが学歴で分かれていない実力重視の企業に転職したり、通信制大学で大卒資格を取得したり、本業とは別に副業を始めるという方法があります。
今の会社に居続けたい理由が給料以外である人は、大卒資格や副業で給料を上げ、今の会社自体にも不満があるという人は高卒でも実力を評価してくれる企業に転職するとよいでしょう。